新築で家を建てる場合やリフォームをする際に、「キッチンに窓を設けるべきかどうか」は悩ましい問題です。
マンションなどでは窓がないキッチンも珍しくないので、必要ないと考える方も多いかもしれません。
ここでは、キッチンに窓を取り付けることでのメリットやデメリット、目的によって選択する種類や、ポイントなどを解説します。
Contents
キッチンに窓は必要なのか?
キッチンには、必ずしも窓が必要というわけではありませんが、キッチンに窓がないと自然光は入ってこないので、若干暗い雰囲気になってしまいます。
キッチンに窓があることで自然光が差し込み、明るく開放的な空間になります。
また、キッチンに奥行きを感じることで空間が広く見えるという視覚的な効果も期待できます。
キッチンは毎日使う場所だからこそ、快適さが大切です。
窓を設置するべきかどうかは、以下のメリットやデメリットを踏まえて総合的に考え判断しましょう。
キッチンに窓を取り付けるメリット
キッチンに窓を取り付けるメリットは以下のようなものがあります。
風通しにより換気や熱気の排出能力が上がる
キッチンには必ず換気扇が備えられていますが、窓を設置することでさらに風の通りがよくなり換気の能力が向上します。
また、窓がないキッチンでは夏場になど熱がこもりやすく、早めに対処しないと熱中症になる危険性もあります。
窓を取り付けることで、熱を効率よく逃がすことができ、換気扇と併用することで暑さを軽減することができます。
採光によりキッチン奥まで明るくなる
独立しているタイプのキッチンは、想像以上に暗くなりがちなので、自然の日差しを取り込むことで奥まで明るい部屋にすることができます。
特に自然の光は、食材の色を鮮やかに見せるので、日々の食卓が見栄えがよくなる効果もあります。
外の景観を楽しみながら調理できる
景色を楽しめるこだわった立地に家を建てた方や、綺麗に庭を手入れされている方などはキッチンに窓があることで素敵な景色を楽しみながら料理をすることができます。
また、キッチンから外の様子がすぐに確認できるため、天候の変化にも気づきやすく洗濯物を干したりしている場合にもすぐに対処することができます。
電気代を削減することができる
キッチンに窓があることで、日中でも光源を確保することができるため、照明を頻繁につけたり消したりする必要が少なくなります。
また、窓があることで換気扇を使わずに済む場合が増えたり、換気扇単体で使用するよりも短時間で換気ができるため、結果的に電気代の節約につながります。
キッチンに窓を付けるデメリット
キッチンに窓をつけると、前述のように多くのメリットがありますが、その一方で以下のようなデメリットもあります。
直射日光でキッチンの温度が上がりやすい
キッチンに窓があることで、自然光が差し込み明るくなるメリットがある一方で、日差しが強く当たり過ぎることでキッチンの温度が過度に上がる可能性があります。
特に夏場など、キッチンに長時間日が差し込むと熱気がこもりやすくなるので注意が必要です
収納スペースが少なくなる恐れがある
窓を設けた周辺に収納スペースを置くと、窓を遮ることになるので一般的に避けて収納を配置します。
避けた分だけ収納家具を配置するスペースが少なくなるので、キッチン周辺に多くの荷物を置いている方は、必要ないものを処分したり工夫して配置を考える必要があります。
近隣から家の中が見えやすくなる
キッチンに大きな窓を設置すると外が見えて開放的になりますが、同時に外からもキッチン内部が見えやすくなります。
隣の家や窓が隣接している場合には、プライバシーの確保が難しくなることもあります。
換気や通気目的で窓を取り付ける場合、人目が気になり窓が開けにくい状態では本末転倒になるので、配置する場所や大きさには十分注意しましょう。
キッチンの窓は目的によって形状を変える
キッチンに取り付ける窓は、どのような目的で取り付けるかにより様々な種類があります。
窓の種類と使い分けは、以下のようになります。
引き違い窓
引き違い窓とは、リビングなどによく見られる左右どちらにも開け閉めできるタイプの窓のことです。
小さい腰窓タイプの窓や、天井近くまである大型のタイプなどもあり、主に眺望や採光を重視する場合に使用します。
開閉しやすいのが特徴ですが、一方で外部から侵入しやすいので防犯対策の検討も必要になります。
上げ下げ窓(上下開閉窓)
上げ下げ窓とは窓を上下にスライドさせて開閉するタイプの窓で、上下両方開閉できるタイプと片側のみしか開かないタイプがあります。
限られたスペースで通気性確保したい場合に適しています。
縦すべり窓
縦すべり窓は、縦軸を基準とした細長いスリット上の窓のことです。
省スペースに取り付けることができ、ドアのように前後開閉できるのが特徴で、コンパクトなキッチンにも取り付けることができます。
横すべり窓
横すべり窓は、横軸を基準とした細長いスリット上の形状で、窓がひさしのように開閉する窓のことです。
カウンター上などの高い位置に取り付けることで作業の邪魔にならず、効率よく採光と通風を確保できます。
ルーバー窓
ルーバー窓とは、窓に羽状の板を並べ、ハンドルを回すことで板の角度を変えて窓の開け閉めをするタイプの窓のことです。
風量のコントロールがしやすく、外部からの視線も遮ることができます。
FIX窓
FIX窓とは、他の窓とは異なり開閉ができないタイプの窓のことです。
開閉ができないので、換気や通気などには効果がありませんが、防犯性を確保しながら採光を得ることができます。
ガラスの種類を使い分ける
窓に使用されるガラスには、大きく分けて「一般ガラス」「強化・防犯ガラス」「機能性ガラス」の3種類があります。
それぞれに特徴や性能が異なるため、目的や設置場所に応じて適所に使い分けるとよいでしょう。
一般ガラス
フロートガラス | 住宅やマンションで一般的に使用されている透明なガラス |
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型板ガラス | 表面に型模様を施したガラス かすみガラスやくもりガラスなどとも呼ばれる |
一般ガラスは費用的に比較的安価なので、様々なシチュエーションで使用されます。
強化・防犯ガラス
強化ガラス | 一般ガラスの3〜5倍強度がでるよう特殊加工を施したガラスで、割れると粉々になる特性あり 破片で怪我しにくいので安全 |
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網入りガラス | 中に金網が入ったガラス 強度は一般ガラスと変わらないが、熱に対して強い特性あり 建築基準法で防火・準防火地域で使用が義務付けられている |
合わせガラス | ガラスとガラスの間に中間層フィルム(0.38mm程度の厚み)を挟み込んだ3層構造で、割れても飛び散りにくい |
防犯ガラス | 合わせガラスと同様の3層構造で、中間層が合わせガラスの倍近い厚み(0.76mm程度) 割るのに時間がかかり、特に防犯性に優れる |
強化・防犯ガラスは、治安の悪い地域や防犯性を高めたい場合に使用されます。
機能性ガラス
複層ガラス | ガラスとガラスの間に中間層があり、間に乾燥空気やガスなどが混入されているガラス 断熱効果や冬場の保温効果に優れる 外気が直接ガラスに触れない為、結露防止にも効果あり |
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Low-E複層ガラス | 複層ガラスの間に太陽の放射熱を低減させる機能をもったLow-E金属膜を入れたガラス 使用用途により「断熱タイプ」と「遮熱タイプ」を選択可能 |
真空ガラス | 複層ガラスの中間層が真空になっているガラス 真空層には全く熱が伝わらないため、複層ガラスよりも高い断熱効果が期待できる |
機能性ガラスは、比較的高価なものが多い反面、機能性に特化しているので費用対効果のある製品になります。
キッチンに窓を取り付ける際のポイントとは
キッチンの窓には、前述のように様々な種類があり、何を重視するかにより選び方が変わります。
窓を取り付ける際のポイントには以下のようになります。
窓にどのような役割を重視するか決める
キッチンに設置する窓には様々な目的や選び方があり、一般的には「換気・採光・眺望」の中でどの特性を優先するか明確にします。
選ぶ項目は必ずしもひとつとは限らず、複数の項目を満たす窓が必要な場合もあります。
そのため、あらかじめ優先順位を決めておくことで、最善の窓を選びやすくなります。
窓の役割を最適化できる位置やサイズを決める
窓の役割を明確にしたら、次は設置する位置とサイズを決めます。
換気を目的とした位置とサイズ
キッチンの換気を目的とした場合には、窓の位置は使い勝手のよい場所でありながら風通しのよい位置が望まれます。
換気は日常使いで頻繁に行うこともあるので、手が届きやすい位置にあるとよいでしょう。
窓の大きさは空気の流れを作ることができればよいので、小さめのサイズでも問題ありません。
採光を目的とした位置とサイズ
採光を目的とした場合には、効率的に光を取り込める場所に窓を設置する必要があります。
その際に、キッチンの向きにより最適な位置と窓の大きさを決めるとよいでしょう。
方角による傾向は以下のようになります。
キッチンの向き | 適した窓の傾向 |
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北向き | 東や南向きのキッチンと比べ自然光の光量が少ないので複数の窓や大きめの窓が好まれる |
南向き | 日照時間が長いので大きな窓にし過ぎるとキッチンが暑くなり過ぎることがあるため、遮光対策も必要になる |
東向き | 朝日が差し込むので、キッチンでの作業が多い時間帯に明るい自然光を取り込みやすく、大きめの窓が好まれる |
西向き | 午後から夕方にかけて日差しが強くなるので、大きくしすぎるとキッチンに熱が篭りやすくなる |
眺望を目的とした位置とサイズ
眺望を優先した窓の場合には、料理しながらまたは食事しながら景色が見やすい位置に窓を設置するとよいでしょう。
外から見えにくい場所や高さを選び、プライバシーと眺望うのバランスを考慮した配置にするのがポイントです。
キッチン窓の配置場所とおすすめの窓タイプ
キッチンに窓を設置する際には、窓のメリットを最大化するために流し台に対しての窓の設置場所を考慮する必要があります。
正面
キッチンで料理をする際に、正面に窓を設置することで視野を確保できるので開放的になります。
壁付キッチンの場合、壁に向かって作業するため圧迫感を感じやすくなりますが、正面に窓をつけることで圧迫感を軽減できます。
キッチンの奥行きは一般的に650mm程度あるので、正面に取り付ける窓は開閉時に外に押し出す必要のない引き違い窓を選択するとよいでしょう。
縦すべりや横すべり窓の場合は窓を奥に開けるので、閉める際に手が届きにくい場合や力を入れにくいこともあります。
開閉時に左右にスライドさせるだけの引き違い窓なら窓に手が届かないなどのストレスを軽減することができます。
側面
キッチンは収納家具が多くなりやすいため、壁面にスペースがない場合には側面に窓を設置すると有効的です。
側面であれば、他の家具やキッチンに干渉することなく設置することが可能です。
キッチンの側面にスペースがない場合には、横すべり窓などの省スペースで通風を確保できる窓を設置すると便利でしょう。
背面
対面キッチンやカウンターキッチンの場合には、背面に窓を設置することでキッチン全体を明るいイメージにすることができます。
背面に取り付ける窓は、明るさを調整しやすいFIX窓にするとよいでしょう。
大きめのFIX窓にすることで開放感が得られます。
天井
平屋やキッチンが2階にある場合には、天井付近に高窓や天窓を取り付けることもできます。
天窓などは柔らかい光が上部から降り注ぐのでキッチンを全体的に明るいイメージにすることができます。
ただし、油汚れなどが付着しやすく、掃除がしにくい点がデメリットとなります。
キッチンに窓を取り付ける際の注意点
キッチンに窓をつけると多くのメリットがありますが、実際に取り付けた後に失敗したと後悔することもあるため、次のような点に注意して計画を立てましょう。
キッチンへの日差しの入り方を想定する
キッチンの向きによって日差しの入り方が大きく異なります。
そのために、日当たりが良すぎるとキッチンが暑くなりすぎて食品の傷みが早まる原因にもなります。
日当たりがよい場所では、窓を小さめに設計したり、ブラインドなどで光量を調整するのも効果的です。
風の通りをイメージする
キッチンの換気目的で窓を追加する場合には、換気扇との位置関係を考慮して風の通りをイメージするとよいでしょう。
採光だけ重視して窓を配置すると、風の通りを無視されてしまうことがあります。
キッチン内だけではなく、リビングからの風が効率よく抜けるように配置すると換気効率が上がります。
近隣の環境を配慮する
近隣に家や道路などがあると周辺からの視線が気になります。
外の景色が見やすいようにという理由だけで大きな窓を設置してしまうと、実際には視線が気になって常にカーテンを閉め切ることになり、窓を付けた意味がない状態になります。
キッチン内部の収納とのバランスを考える
キッチンはどの家庭でも限られたスペースしか確保されていないため、収納とのバランスを考える必要があります。
また、キッチンは収納したいものがどんどん多くなってしまう場所でもあるため、窓を安易に設置してしまうと、周囲に収納スペースを確保できなくなることがあるので十分に収納との兼ね合いを考慮して窓の位置を検討する必要があります。
まとめ
キッチンに窓を付けることでのメリットやデメリット、取り付ける目的によって選択する種類や、窓を取り付ける際のポイントなどを解説しました。
キッチンに窓をつけることで換気機能が向上したりキッチンが明るく清々しくなる一方で、直射日光により暑くなりすぎたり外からの視線が気になることもあります。
また、窓には様々な形状やガラスの種類があり、求める機能によって適切なものを選ぶ必要があります。
設置場所やデザインに悩んだ際は、リフォーム専門の会社に相談することで、より快適で機能的なキッチンづくりが実現できるでしょう。